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合併特例債は打ち出の小槌か

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庁舎新築計画と合併特例債への疑問/CityhallProblem03


庁舎新築計画と合併特例債への疑問/CityhallProblem03

合併特例債の落とし穴


2014年8月16日現在でも、尾道市民の大半は、尾道市がすすめる市庁舎新築に関する正確な情報を知らない。尾道市は当初より公会堂を解体することを前提としていたと思われ、公会堂の耐震性能や市庁舎を新築するとした場合の適切な用地の調査しないで「築後50年以上が経過して老朽化している」(2014年8月広報おのみち3ページ)と言い切っている。さらに尾道公会堂の稼働率(利用率)は、文化施設課の2013年度報告では、すべての文化ホールの稼働率の中で最も高かったが、敢えて700人以上の参加という条件をつけ尾道市の都合の良い数字を導き出し、公会堂の利用は低調であると市民に広報している。その後、尾道市民は公会堂を失ったため、音楽や文化活動の場を確保することに苦慮しているのが現状だ。
2007年に数億円をかけリニューアル(アスベスト除去と客席や楽屋など)した公会堂で、老朽化しているのは音響などの設備であって、躯体(建物)ではない。尾道市が解体しようとする公会堂は、教育委員会の所轄となり、解体するには市議会議員の3分の2の賛成が必要ではなかったか。仮に公会堂解体の同意が得られないとき、尾道市がすすめる公会堂解体後の跡地に新築することは不可能となる。ところが、尾道市議会も公会堂の耐震性能も調べず、平谷尾道市長の推進する公会堂を解体した跡地に、現市庁の舎1.7倍の新庁舎建設に同意した。

合併特例債とはどんなもの?!


合併特例債は事業費の95%のうち、7割を国が負担し、自治体負担が3割というものだが、果たして尾道市がいうように合併特特例債は打ち出の小槌か?!尾道市は、耐震改修すれば十分使用に耐えられる市庁舎本館と公会堂(現在の貨幣価値に換算すると両者の建築費総額は54億5千万円)を解体し、その跡地に海辺ではリスクが非常に高いとされる免震装置を採用した市庁舎新築を推進し、総額100億円を越える大盤振舞いの箱物行政計画を発表した。
この巨額な事業費の95%は、合併特例債で国が7割の負担をしてくれるので、尾道市は3割負担で済む。だから合併特例債は目いっぱい使わねば損だと発想しているようだ。
事実、合併特例債を適用させることを最優先課題とし、諮問された尾道市庁舎整備検討委員会では、審議検討するには不十分な提出データ量のなかで、2013年7月から2014年1月の間、たった5回の委員会開催をもって、強引に尾道市が考える「公会堂を解体した跡地に新築する」案を誘導している。その委員会での検討内容を伝える[尾道市庁舎整備検討委員会議事録]を読めば、一目瞭然である。
実は、国の負担は最終的には国民が負担する負債であり、合併特例債でいう国の負担とは、尾道市に負担金として現金支給するわけではない。合併特例債は地方交付税の中に組み込まれるもので、地方交付税は国の財政状況の厳しさから縮減されているのが実情である。地方交付税が縮減されれば、自ずと尾道市の負担は増大して来る。

IMF(国際通貨基金)から日本政府への勧告


日本経済は、アベノミクスにより極度の円高是正は実現できたものの、想定以上のGDPの落ち込みで、現在も極めて深刻な状況にある。2011年6月、国連の専門機関であるIMF(国際通貨基金)は、日本の公的債務の国内総生産(GDP)に対する比率は220%超と高水準にあるとして、2020年までに135%程度に引き下げるためには、消費税を何年かかけて段階的に15%に引き上げることが重要だと試算し、その旨を日本政府に勧告している。
また日本の人口は高齢化と少子化により急速に減少していくことが推測されている。人口が減少するということは、想定外の大幅な技術革新や産業構造の高度化がない限り、経済が収縮していくことを意味する。
2014年7月に内閣府が発表したプライマリーバランス(財政収支)の試算によれば、消費税10%が実現したとしても、政府の目標である「2020年財政の黒字化」は困難であり、さらなる努力をしなければ11.9兆円の赤字となる見通しだという。ますます厳しくなる日本経済にあって、将来とも地方交付税が増額されるのではなく、縮減圧縮される公算は極めて大きい。

日本政策投資銀行が発表した『合併市町村が直面する財政上の課題』とは


株式会社日本政策投資銀行地域企画部が2013年11月に発表している「合併市町村が直面する財政上の課題 –失われる交付税9千億円、迫り来る公共施設老朽化−」(http://www.dbj.jp/pdf/investigate/etc/pdf/book1311_01.pdf)上記レポートの15ページに書かれている「4−1 合併特例債」には、合併特例債の償還負担が財政運営の重しになる懸念が指摘されている。具体的には「合併特例債の元利償還金が基準財政需要額のプラス要因となることは保障されているものの、地方交付税の総額が地方財政計画の中で決定され、今後大幅な増加が見込み難い中では、合併特例債の元利償還金の基準財政需要額への算入増加は、他の行政経費の基準財政需要額への算入抑制を促し、必ずしも基準財政需要額全体の増加につながるとはいえない。つまり、実質的には普通交付税が純増することは保障されていない。」のである。

民間企業は、経済の厳しいときに本社屋に高額な投資はしない。


合併特例債の対象としながらも、極力建設費用を圧縮し、耐震性能をIS値=0.9〜0.75を確保することで、贅沢を言わずに現在の市庁舎スペース(7,000u)を維持することだ。それは1970年代の市庁舎西側の増築棟と5階屋上に増築した建物を減築し、本館東側に減築したスペースと同等スペースを新築し、本館部分とエキスパンション・ジョイントでつなぐことだ。その工事費は素人考えではあるが、尾道市の計画する工事費の4分の1以下だろう。
大変厳しい言い方をすれば、民間の企業経営者の感覚でいえば、財政が将来的にもひっ迫すると予想されるなかで、本社事務所は必要最低限の耐震性能を確保しながら、最少限の工事費で必要不可欠な改修にとどめることだろう。前市政を引き継いで誕生した現市政には、知恵を出し、「ぞうきん掛けのまちづくり」を続行してもらいたいものだ。

年間1,000人を超す人口減で、尾道市の将来は危うい。


2018年12月現在、尾道市の人口は、平成の大合併(2006年)当時の15万3千人から13万7千人(うち外国人約2,700人)となり、2040年の推定10万人にどんどん近づいている。人口減とともに削減される地方交付税、その中に組み込まれた合併特例債の危うさがそのうち尾道市に現実のものとなって迫ってくることが容易に想像される。
写真は、新築当時の市庁舎本館と公会堂、そして尾道の将来を考える会が提案した様々な改修案、模型はその一つ現市庁舎本館の南北軸の耐震性能を補強したイメージだ。
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